番外編ー2 祖父の心、私の命(※パンジー視点)

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 私は、祈り続けた。  神様、こんな私でごめんなさい。  神様、どうか、みんなを守ってください。幸せにしてください。 「……」  あるとき。  私は、いろいろな事がわかるようになった。  シスターたちが本心から私を支えてくれている事や、私がどれほど恥知らずな人間で、愚かで、優しく手を差し伸べてくれた人たちを酷く傷つけてしまったのか、自分の姿が見えるようになった。  私は祖父と……あの親切な善き人、ローガン伯爵に手紙を書いた。  シスターがきちんとした手紙の書き方を教えてくれた。  夏だった。  祖父が、会いに来てくれた。 「パンジー」 「お祖父様……」  久しぶりに見た祖父は、記憶の通りに、シワシワだった。  老人は年をとらないのだ。  だけど、祖父の目が、優しい気がした。 「パンジー、手紙をありがとう。お前に、伝えなければと思ったんだよ。生きているうちに直接」  そう祖父は前置きをして、言った。 「お前の母親は、よく、お前の祖母と一緒に、その故郷へ帰省していた。私は土地を離れる事は出来なかったから、自由にさせていた。そして、ある時、お前の母親は、お前を身籠って帰って来た」 「はい」 「お前の父親は水夫だ。婿入りさせようと手を尽くしたが、既に遅かった。雇い主の一家を襲い、囚われ、処刑されていた」 「……はい」  祖父は注意深く言葉を選んでいた。  そしてその姿を、私は、ずっと、見て育ったのだとわかるようになっていた。  胸が苦しい。 「だが、パンジー。お前の父親の罪は、お前自身の罪ではないのだ。それだけは確実に分けて考えなければいかん。わかるかい? お前は碌でもない親から生まれた子だが、極悪人の分身ではないのだ。極悪人に成り下がり、悪魔に魂を売り渡したのは、お前ではなく、お前の母親なんだ。私の……娘だ」 「……」  私は、母の事を祖父と話しあう心境にはどうしてもなれなかった。   「私は、妻も、娘も……お前も、愛する事ができなかったよ。だが、守ろうとしたんだ。しかし、守り切れなかった。私はできない事をやろうとしてしまったんだ。もっと早く、お前を、神様にお預けすればよかったな。すまなかった、パンジー」    祖父の目が潤んでいる。  私は泣かないように努力しながら、祖父に微笑んだ。   「いいえ」  私はまず、はっきりと、そう伝えた。
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