恋する成分

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
乙瀬君はいつもカッコイイ。 この寝不足で充血した眼で確認しても眩しいくらいカッコイイからずるい。 昨晩はドキドキして眠れなかった。 何度も作り直したチョコレートと繰り返した渡す時のシミュレーション。内気な私が気持ちを伝えるのは今日、2月14日しかない。 渡り廊下を歩いてこっちに向かってくる乙瀬君が通り過ぎて居なくなったりしないように力いっぱい呼び止めた。 「乙瀬君!!」 「夢咲さん、どうしたの?」と言いながら見せた彼の笑顔にはフェニルエチルアミンが絶対に入っていると思う。 「あの、これ…」 見るからに本命と分かるワンポイントハートが付いた箱を思い切って乙瀬君に渡した。 「あのね、これ魔法をかけたんだ。」 「えっ、魔法?」 そう、このチョコを食べた瞬間、乙瀬君が私の事好きになる魔法だよ、って心の中で呟いた。 ー乙瀬sideー 夢咲さんは可愛い。 最近すごく目が合う。 いや、目が合うからって夢咲さんが俺の事好きだろうと思い上がってる訳ではない事だけは言わせて欲しい。元々可愛いなと思っていて、最近目が合うし余計に気になってきたという事は確かにある。 「夢咲さんに告白しようかな」と呟いた俺に友達が提案してきたのは、大の少女漫画好きらしい夢咲さんのために校庭にライン引きで大きく「好き」って書いて告白するというものだったが、ダチが見たいだけだと思うので却下した。 焦って告白したいのには訳がある。 もうすぐバレンタインという行事があるからだ。 ここで、夢咲さんが好きな人にチョコを渡したとしたら絶対相手は嬉しいはずなので、そうしたら俺が困る。 こうなったらバレンタインの日に逆告白しよう、と俺は決意した。 当日、夢咲さんを探していたら夢咲さんの方から声をかけてくれた。 信じられない奇跡が起きた。 この箱、このハートってつまり…。 魔法…?魔法なんてもうとっくにかかっているってば、って俺は心の中で呟いた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!