お迎えに来る人はニセモノ

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「ママ、みてみて!」  バタバタと走ってきた舞はリリンちゃんとの写真を見せる。満面の笑顔の娘の写真に私も笑みが溢れた。  その一分後、本物の洋介が汗だくで帰ってきてもちろん鍵を開けて入ってきたが、私に合言葉をやらされてちゃんと答えてくれた。 「もしかして来たのか、俺に化けて」  心配そうに言ってくれる洋介に私は眉をハの字にして笑う。タクシー使って帰ってエントランスから階段使って一気に走ってきたらしい。本当、良い旦那だ。  こんなに性格が悪い私にはもったいないくらい。  警察、と慌てる洋介を宥め、証拠はないし信じてもらえないだろうから幼稚園に注意喚起してもらおう、と提案した。  もちろん幼稚園には言う。さっくり軽めに。私たちのようにしっかり話し合いをしていれば何も問題ないのだ。誰にでもすぐにできる簡単な対策。  上辺だけのセレブ臭を撒き散らす家庭だって当然できるしやって当たり前だ。一度お知らせが来ているのだから。 ――やってないだろうけど。 「合言葉、また考えないとね」 「ああ。気を引き締めないと。安いから住んでたけど、ここ引っ越すか、セキュリティ万全のマンションに。金貯まってきたし」 「私の貯金も使えば問題ないと思うから、そうしよう。ご近所もウザイし」  相手が人間じゃないっぽいからセキュリティの面は無理もないと思うけど、引っ越せるのはありがたい。まあ、ご近所はもうちょっとでから、急がなくてもいいけど。  鼻歌まじりに洋介の好きな唐揚げを作りながら、あと何日で「うちのマイ知らない!?」って来るかな、と考えて私は小さく笑った。 END
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