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12 ひとりぼっち
「なぜなの?」
枯れたような声を絞り出して、私は妹に尋ねた。
血の繋がった、同じような姿の、私の妹。
まったく知らない未知の人物であるかのようにさえ、思える。
彼女のすべてが、私にはもうわからなかった。
憎む事さえ、難しいほどに。
あなたは誰なのと……問いたいほどに。
マーシアが私を睨んだ。
涙を流して、憎しみを込めて。
「なぜ!? 私より頭がいいんだから自分で考えなさいよ!!」
「……」
モーリスが視線で逮捕を命じる。
軍人が妹を後手に縛り上げる様を見ていたら、酷い焦燥感が胸を破った。一瞬前まで妹の事を悪い夢か幻みたいに、存在まで疑ったくらいなのに。
それでも、マーシアは私の妹なのだった。
気づくと私はモーリスの後ろに立ち、彼の肘を掴んで震えて見あげた。
「お願い。酷い事はしないで」
次の瞬間、妹が首を巡らせて私を罵った。
「私を罪人にしたのはあなたよ!」
「!?」
私は初めて恐れを感じた。
彼女は狂っているのではない。正気で言っている。わかっている。
あれが妹。
「たった1年早く生まれただけで、あなたは愛されて、褒められて、世の中からも持て囃されて、聖人ぶって……だから私は愛されなかった! あなたが善い子で、私があなたじゃないから!! あなたが生きている限り、私の見える場所で息をしている限り、私の人生は塵屑なのよ!!」
「……」
妹は、命の尊さを知らない。
私の命も、妹の命も、等しく尊いという事が、わからないのだ。
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