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「今日の配信、まだかな」
里子は眉を寄せ、ラーメンをすすった。
今日、里子は家に帰るやいなやダブレットを起動させ、カップラーメンを用意した。
今日は少し残業があったから、7時の配信まで間に合うかどうか微妙だったが、なんとか5分前に家に着いたことは奇跡だった。
そして、ちょうどカップラーメンが出来上がったころ、7時を迎えた。
しかし、動画の配信はいつもの7時を迎えてもなかなか開始しない。
推しのインフルエンサー、miuになにかがあったのではないかと不安になってくる。
miuは美容系の動画を配信しているインフルエンサーだ。メイクの仕方だったり、スキンケア方法だったりを配信している。応援を始めた頃はまだフォロワーが30人前後だったが、数ヶ月経った今は1万人までに増えている。
この調子だと、もっと増え、真のインフルエンサーになっていくだろう。
今の世の中は、一般人が自分自身の力で有名になることが出来る。そしてそれを身近で応援出来るのが、いい。
自分の応援で誰かが有名になる過程を感じられる。
自分も同じ”中心”にいる気持ちになる。
「ーー皆さん、こんばんは」
カップ麺を食べ終わり、ビールを口に含んだ頃、やっと配信が始まった。
7分遅れだった。
備考欄には『配信時間、遅れてごめんなさい』と明記されている。
里子はコメントを打ち込む。
『遅いよー。そんなんじゃ、ファン離れてくよ!配信楽しみにしているのに』
愛のムチだ。有名になればなるほど、天狗になるのが人間。初期から応援してきた自分には、厳しく彼女を育てる義務がある。里子はそう思い、意気揚々と送信ボタンを押す。
「今日はですね、いつもと違う感じで、私の生い立ち?みたいなことを、話したいなと思います。私の垢抜け前の恥ずかしい写真も用意しているので、まずそれを見てもらおうかな」
すると画面に一枚の写真が出てくる。
「……え」
それを見て、里子は目を丸くした。
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