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私じゃない、私じゃない。
『言っている馬鹿馬鹿しい言葉の質』が一緒なわけない。チャットなんて、なんのことか知らない。そもそも自分は彼女が誰か知らなかったのだ。
チャットで、きっと自分の悪口が囁かれていた。自分以外の仲良しグループでだけ見れるチャットだろうと予想がついた。
それを里子が知るはずもないのに。
里子の頭には数々の抗議が浮かぶ。けれど、それをDMで送ることは出来なかった。
同じ、じゃないなんて。
誰が信じてくれるのだろうか。
自分が彼女に送ったコメントを見返す。
【ブサイクな子が可愛くなるのって、なんか応援したくなるよね】
【話し方、変えたほうがもっとマシになるんじゃない】
【フォロワー増えたからって、調子に乗ると痛い目遭うよ】
彼女のために、送っていたはずのメッセージ。
言葉だけを見ていると、蘇った記憶がある。
いつか”中心”になれると思っていた子供の頃。変わりたいって思ったあの頃。
変わっていたら、きっと美談になっていた。
でも、変われなかった。
卑屈になって、知らず知らず人を攻撃して上から見ていた。
大したことじゃないって思っていたのは、きっと攻撃側だけだ。
そんな人にはなりたくないって、あの頃思ったのに。
里子の脳裏に閉まっていた小学生時代の記憶が浮かぶ。
仲が良かったはずだった美奈たちが、里子の悪口を言っていた。
「根暗」「ブス」そんな言葉が聞こえた。
でも、聞こえなかったことにした。彼女たちから離れるということは、一人ぼっちになることだったから。
いつか見返そう、そんな気持ちをいだきながら、自分は誰かにそんな言葉をかける人にだけは絶対ならない、そう誓ったはずだった。
大人になるにつれ、記憶は薄れた。
そして、今、感じる。
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