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「ああ、結婚二か月で夫の余命宣告を受けて、ショックのあまり自殺してしまった方ですね」
死神の言い方に腹が立つ。
「香奈の事をそんな風に言わないで下さい」
「怒りましたか?失礼。人違いのないようにわかりやすく説明しただけですから」
「それで香奈はどこにいるんです?」
「地獄にでもいらっしゃるんじゃないですか。自殺は禁じられている行為ですから」
「香奈は自殺じゃありません!たまたま道路に飛び出たらトラックと衝突しただけです。あれは事故です」
死神が威嚇するような鋭い視線を向けた。
「佐伯さん。嘘を言ってはいけませんよ。奥様をかばいたい気持ちはわかります。なんて言ったって自殺の原因はあなたですからね。大事な人が死ぬ所は見たくないって奥様は道路に飛び出しましたよね。きっとあなたの事を愛していらっしゃったんでしょうね。奥様に愛されて幸せな方ですね」
胃の奥がカッと熱くなった。
「そしてあなたは奥様が亡くなった後、ずっと後悔していましたね。自分と結婚した事で香奈さんを不幸にしたって。香奈さんを殺したのは自分だって」
悔しい想いが込み上がる。胸が強く締め付けられた。
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