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「そんなにご自分を責めないで下さい。病気になったのは運命なんですから仕方ありません。あなたは香奈さんが亡くなった後、後追い自殺する事なく、病に倒れながらも運命を全うされました。ですから天国に行けます。良かったですね」
死神が儀礼的な笑みを浮かべた。
「天国になんか行きたくありません。香奈と同じ所に連れて行って下さい。香奈に会わせて下さい。俺は香奈に会いに来たんです!」
「おや。珍しい方ですね。天国よりも地獄がいいなんて」
死神が小馬鹿にするように見た。
「しかし、無理です。香奈さんとあなたは行先が違うのです。もう二度と会う事はないでしょう」
「そんな……」
膝が崩れ、地面に手をついた。
「ショックですよね。死んだら香奈さんに会える。それだけがあなたの希望だったんですから。でもご安心下さい。天国に行けば香奈さんの事も綺麗に忘れますから」
香奈を忘れるなんて絶対に嫌だ。
香奈は俺の全てだ。
無理だと言われようが、香奈の所に行くんだ。
その場から立ち上がり、全力で逃げ出した。
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