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 しかし、死神が目の前に瞬間移動した。 「佐伯さん、あなたも手を焼かせるんですか」  うんざりしたように腕を組み、死神がため息をついた。 「香奈に会えなければ死んだ意味がないんだ」 「人間というのは勝手な事ばかり言いますね。香奈さんは本来なら後、六十年生きられたんです。それを勝手に自己の利益の為に六十年分の命を捨てたんです。地獄行きは当然です」 「香奈にそうさせたのは俺です。俺にも罪があるはずです」 「だから地獄に連れて行けと言うのですか?」  強く頷いた。 「地獄は恐ろしい所ですよ。苦しみが永遠に続く世界です。救いは一切ありません。鬼たちに奴隷のように働かせられます。生きていた時は死んで逃げる事ができますが、もう死んでいるので逃げる事もできません」 「そんな酷い場所に香奈がいるんですか!早く連れて行って下さい!香奈一人にそんな苦しみ味合わせられません!」  死神の胸ぐらを掴んだ。  次の瞬間、跳ね返されて尻餅をついた。 「佐伯さん、無礼ですよ」  死神はスーツの乱れを直し、俺を見下ろした。 「どうか、香奈の所に連れて行って下さい。香奈を不幸にしたくないんです」  地面に手をつき、頭を下げた。 「土下座ですか。古風な事をしますね」  死神がクスクスと笑った。 「お願いします!どんな事でもしますから、香奈に会わせて下さい」
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