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津島典明の場合
「――いやぁ。やっぱり進展ないっすねぇ」
宜野浦の街に出て、最初に発見された津島典明を中心に聞き込みを再開した源次と隆晴だったが、三ヶ月前の情報以上のものは確認できていなかった。
住宅地だけでなく、商業地域、さらには繁華街も含めて日中歩き周った中での空振りは、砂漠の中で一本の針を探さないといけないほどの困難さを見せた。
「まさに海底撈月だわな」
「何すかそれ?」
「麻雀にあるんだよ。最後の最後の牌でツモって上がるとそういう役がつく。海面に映る月を救うほど困難で労力が無駄になるって四字熟語でもある。やっぱ聞き込みの難しさって、打っても響かないことにあるよな」
聞き込みに入った幹線道路沿いの食堂から出て、外の自販機で缶コーヒーを二つ買った源次が一つを隆晴に投げた。
「あ。あざす。おごりっすか?」
「おごりだが言い方」
「あ。すいません。ゲンさん、いただきます」
隆晴が足を広げて中腰になり頭を下げた。
「これじゃヤクザだろ。やめろや。やっぱり返せ」
「えー。嫌っすよ。一度上げたもの取り返すとか大人のすることですか」
「うっせえ。お前なんて川の水でも飲んでろ」
「あー! 横暴だ! ほんとに取り上げた!」
力任せに隆晴から缶コーヒーを奪い取り、ジャケットのポケットに突っ込む。
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