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「そんなことより、津島の情報があったら渡せよ。所轄落ちのお前を使ってやれるのは俺しかいねぇんだからな」
井波は源次の肩を軽く叩いて聞き込みを再開するために移動した。井波の最後の言葉を聞いた隆晴は、少し気まずそうは表情をしている。
「なんでお前が辛気臭い顔してんだよ、タカ。俺には出生街道は似合わねぇから所轄がちょうどいいんだよ」
「けど、課長もあと数年で本庁に戻るんですよね。それなのにゲンさんだけ……」
「だから気にすんな。ヒトはヒトだ。みんなそれぞれが進むように進めばいい」
缶コーヒーを飲み干した源次は繁華街側での聞き込みをしようと歩きだすと、――
「なんだ、あの女は」
交差点の向こう側で、奇妙な姿の女性が歩いていることに気付いた。
胸元が大きく開いたドレス姿で、背中も腰辺りまで開いており、スカートの裾もタイトだがサイドに大きなスリットが臀部まで続いていた。キャバ嬢ですら着ないだろう際どいものだが、ツバの広い帽子と大きめなサングラス、マスクをして顔を隠しており年齢すら読み切れない。真っ昼間に見かけるにはかなり異様な出で立ちだった。
「何すかあのドチャクソエロい女は。すげぇっすね」
「……追うぞ」
「は? ゲンさんあんな女がタイプっすか?」
「バカ、ちげぇよ。昼間からありゃ完全に異常だ」
「キャバ嬢じゃないんすか。昼キャバとかあるでしょう」
「キャバ嬢が出勤するときに髪型が崩れる帽子とか化粧が崩れることするかよ。それに涼しくなったとは言えこの暑さなら汗も嫌がる。普通ならタクシーか送迎がある」
源次と隆晴は遠目に後ろ姿を捉えながら繁華街方向に歩き続ける女を追った。
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