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「ガイシャの名前は栗田優。証券会社に務める三十四歳男性、未婚。三日前に会社から連絡を受けた親から捜索願いが出ていました。両手足の関節が鈍器のようなもので潰されて、全身の腱が鋭利な刃物で乱暴に切られてますね。太い血管もいくつも切られてすごい出血量みたいっす」
隆晴が鑑識からの報告を読み上げる。状況から常軌を逸していることはすぐにわかり、捜査本部の設置が急がれていた。
「赤い鳥居っていったか。ってことは……」
「ええ。二件目ね。それに、錆びてボロボロの十円玉もあったそうよ」
「ちっ……粋じゃねぇな」
息絶えた栗田の体には赤いペンキで横二本、縦二本の線が引かれており、その見た目は鳥居のようであった。そして、それは三ヶ月前に起きた津島憲明という男の遺体とかなり酷似している。
「これって、やっぱり連続性がありますよね」
「そうね。錆びた十円玉は津島のときの報道にも出ていない。模倣犯とは考えにくいわ」
「やれやれだぜ。一件目は外されていた俺をわざわざ組み込むってか」
「あんたが署長に媚び売った結果じゃない。喜びなさいよ」
「媚って接待で親倍振り込むことがかよ」
「とにかく朝一で動くわよ。署長の推薦なんだからしっかりしなさい」
臭い靴下を履き直している源次の背中を咲が強く叩く。数時間後には県警本部から派遣されてくる刑事とともに特別捜査本部が設置され、共に犯人逮捕のために大規模な捜査が始まるだろう。
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