栗田優の場合

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 ――『宜野浦連続鳥居猟奇殺人事件』。特別捜査本部の冠が決まり、大きな紙に印刷された看板が会議室の入り口に貼り付けられる。  続々と入ってくる捜査員たちに混ざり、源次と隆晴も長机で捜査の指揮をとる管理官たちの到着を待っていた。 「俺、特捜に招集されるの初めてなんスよ。なんかドキドキしますね」 「ガキかよまったく。所轄の刑事なんてただのコマだぞ」 「いやー。それでも一大事件の一端に関わっているって刑事冥利に尽きるっていうか――」 「最近の若いのは威勢がいいね。事件ってのは不謹慎なのに楽しんじゃって」  初めての特別捜査本部入りを果たした隆晴の声を聞いて、後ろから近寄ってきた男が絡んできた。  長身の細身にくたびれた灰色のジャケットに袖を通さず肩に掛けた中年男――県警本部から派遣された井波(いなみ)(たける)。源次の顔を見ては片方の口角を上げる。 「これは先輩の教育がなってないんじゃあないか。おーこれはゲン。調子はどうだ」 「んだよ、イヤミ。相変わらず性格悪いな、元気そうでつまんねーよ」 「邪険にするなよ、友達だろう」 「勘違いするな。高校が同じなだけだろう、友達認定すんなよ。気色悪いな」
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