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僕は正直に答える。
「いや、普通だったよ。自殺する人の心境なんてわからないけど、自殺する間際の人間には見えなかったな」
そうか、と彼は相槌を打ち、続けて僕に言う。
「まぁでも、ナッスンってちょっと変わったところあったものな。わからなくもないかもな」
「変なところ?」
死んだ人間を悪く言うのはあまり良いことは思えなかったが、それでも僕も彼も他人の悪口は嫌いではなかったので、僕は話を促した。
「ほら、癇癪持ちというかさ、何かちょっとしたことで異常に怒ったりしてただろ?」
「ああ、確かにそういうところはあったな」
確かに、感情の起伏が激しいとでも言えばいいのか、ナッスンはそういう人間ではあった。僕はその事で被害を被ったことがあるので、よくわかる。
「それにさ、4年生の頃かな、飼育小屋のウサギが殺された事件があっただろ? あれ、ナッスンがやったって噂があったじゃないか」
確かに、当時はそんな噂もあった気がする。
でも僕にはナッスンはそんなことをする人間には思えなかった。感情の起伏は激しいが、根は優しい人間だったと記憶している。
噂の真偽の程はわからないが、ナッスンが死ぬ前に、直接本人に確かめておけばよかったと、少し後悔した。実際のところ、ウサギを殺したのは誰だったんだろう。
ただ、ウサギとは関係なく、ナッスンの癇癪に迷惑したことも事実だ。そんな話をしていると当時の記憶が蘇ってきて、僕は少し腹が立ってきた。
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