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「まぁウサギの真偽の程はわからないけど、ナッスンの癇癪についてはわかるよ」
決してナッスンの話題を続けたいわけではなかったのだが、思い返すと腹が立ってきたので、僕は話さずにはいられなくなった。
僕は続ける。
「昔、アニメのカードを集めるの流行ってたじゃない。で、俺、なんか結構なレアカードを手に入れたことがあってさ、ナッスンが見せてくれって言うから渡したのよ。そしたらその後、何故かは忘れたけど、ちょっとした口論になって、あいつ、いきなり俺のカードを破いたんだぜ、信じられるか? それを思うと、やっぱり少し頭がおかしい奴だったのかもしれないな」
「……それは中々に酷いな」
彼は相槌を打つ。一度話を始めたら悪口が止まらなくなってきた。僕は続ける。
「だろ? 許せなかったよ。大人になってから調べたらさ、何かプレミア付いてて、あのカード、今は20万円で売れるんだってさ、ふざけんなよ」
「……それは腹立つな」
……つい勢いに任せて死人の悪口を言ってしまった。僕は少し反省する。その件を今更掘り下げても仕方がないし、これ以上はあまりナッスンの話はしたくない。もはや、どうでもいいことでもある。
「でもさ、それを言ったら俺もお前に借りたゲームソフト、なんか限定版とか言ってたやつ、失くしたことあったよな。今更だけど、すまん」
……そういえば、そんなこともあった。
古い記憶ではあるので忘れていたが、限定版パッケージの、かなり希少なゲームソフトが懸賞で当たり、ひとしきり遊んだあとで彼に貸したら、見事に紛失されたことがあった。
もちろん当時も彼は謝罪していたが、思い返すと本当にもったいない気がする。
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