カフェラテがぬるい

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 しかし彼は一向に席を立つことなく、話を続けた。 「まぁ、お詫びと言ってはなんだけど、今日は夕飯おごるよ、だから許せ」  悪い話ではない。僕は甘んじて受け入れることにした。  であれば、多めに見て1食1万円として、その分は30万円というボーダーラインに加味してあげようと思う。つまり損害が31万円までなら許すことにする。だから早く席を立ってほしい。 「あと、ついでに言っておくと、この前借りた漫画、雨で濡れちゃった。すまん。ついでに許せ」  どさくさに紛れて別の案件を()じ込んできた。  許すわけがない。マイナス500円。早く席を立て。 「お詫びに新刊買ってきた」  いい奴だ。3千ポイントやろう。 「でもそれとは別に、この間貸した2万円、ちゃんと返せよ」  忘れていた。プラス2万。現在33万2千500円。 「あ、肩にゴミついてるぞ、取ってやる」  ポイント稼ぎに余念がない。あざといので(かん)に触る。マイナス5千。  しめて32万7千500円。  ナッスンのボーダーラインが20万円だったことを考えると、彼の場合は友情の深さも考慮して、この位が妥当な気がする。早く調べて安心するなり激怒するなりしたい。  しかし、こんなことで彼との友情を壊すのは忍びないので、できれば32万7千500円を下回っていてほしいとは思う。  それに、なんだかんだで面倒臭い。ナッスンの時は上手くできたが、次も上手くできるとは限らない。自殺に偽装するにも、かなりの体力と神経を使うのだ。
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