現実では起こり得ない、非現実的な物語の主人公になってしまった件について

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僕は今までそういう経験が無かった。 お付き合いをした人がいなかったので、この年までキスもしたことがない。なのに、僕は唇が触れる寸前に無意識に唇を開き、彼の舌を迎え入れていた。 覚えていないのに覚えている。 彼の舌が口腔内に入り、僕の舌を絡めとる。それだけで下肢がじわりと熱くなって、ずっと違和感があるあそこが何かを求めてキュッとなる。 彼の舌が僕の口内を這い回り、上顎に触れた瞬間身体がびくんと反応する。それを楽しむように何度も上顎ばかりを舌で撫でられ、身体が小刻みに震えて涙が出てくる。 何度も角度を変えながら合わさる唇の端から、飲み込みきれない唾液が滴り落ちていく。そしていつの間にか脇腹を張っていた手が徐々に胸まで来ると、まだ触れてもいないのにその敏感な先端がキュンとなった。 なんで? 僕・・・おかしい・・・。 頭は理解していないのに身体が覚えているのか、彼の手の動きを先回りして勝手に昂っていく。 口内を犯されながら、その手で胸を触って欲しい。そして、あの熱くて太いものを・・・。 身体が欲するものを想像しただけで僕の下肢は熱を帯び、触られもしないのにその頭をもたげ始める。 彼の手は、わざと焦らするかのように敏感な先端には触れず、その周りだけを這う。 すると触って欲しくて身体が余計に欲情していく。 「いい子だ。ちゃんと覚えているね」 長く犯したその唇を離し、満足したようにそう言う彼に僕は首を横に振る。 「・・・覚えてない・・・怖い・・・」 勝手に反応する身体に、恐怖で涙が零れる。なのに彼はそんな僕に優しく微笑んで頭を撫でる。 「いや、覚えているよ。君の身体は僕を覚えて僕を欲している」 その言葉に僕はさらに激しく頭を振る。 「知らない。分からないっ」 僕の記憶はあのワインを飲んだ所まで。なのに彼が言う通り、身体は彼を求めて熱くなる。 頑なに否定する僕に彼は困ったように少し笑うと、徐に胸の先端をキュッと抓った。その瞬間、そこから甘美な、けれど鋭い快感が身体を駆け抜けていく。 「ああっ・・・」 信じられないくらい高い声が僕の口から上がる。 彼はそのままそこをキリキリと抓りあげ、耳元にその唇を寄せる。 「あんなに時間をかけて慣らしたここはちゃんと覚えているよ。それに・・・」 もう片方の手が僕の大腿の間から差し入れられ、さっきからキュンとなっている後孔に触れる。 「ここも僕を求めてひくついている。あんなにずっと僕を受け入れてくれたから、ほら、まだ柔らかい」 そう言ってそこに指の先を挿れた。するとそこは待っていたとばかりに歓喜するものの、欲していたものよりもずっと細く、しかもほんの少ししか挿入って来てくれなかったことにキュッと締めて不満を表す。 「・・・違う・・・違うの・・・」 そんな自分の身体が信じられなくて、僕は泣きながらなおも首を振り続ける。 すると彼はその指を抜いてしまった。 「強情だね。身体は抜かれた指が寂しくてひくついているというのに。もう観念して僕を受け入れなさい。そもそも、僕の見合い相手として来たのだから、僕が君を娶ってもいいということだろう?」 娶る? 僕はただ父に言われて姉の代わりに来ただけだ。 「まあ、ダメだと言われても僕のところに来てもらうけどね。どうやら君と僕とは身体の相性がいいらしい。初めてだよ。僕が再び抱きたいと思った人は」 そう言って再びその人は僕の胸を抓った。 「あん・・・っ」 きゅんきゅんなっている身体に、鋭い快感が再び走る。そして、ひくつく後孔に先程とは比べ物にならないくらい熱く太い物があてがわれる。 「言ってごらん。僕のものになると」 その言葉は甘美な毒となって僕の身体に染み込んでくる。 後孔に当たる熱いものを早く挿れて欲しい。なのにそれは入口に当たったまま一向に挿入ってこない。 そして、大して触れられていないというのに、期待だけで限界まで昂った僕の身体は、僕の心を裏切って早く犯してもらいたくて腰を揺らす。 「早く言ってごらん。そうしたら好きなだけ君の中をぐちゃぐちゃにかき回してあげるよ」 その言葉に、僕の身体は限界だった。彼は言葉だけで 僕を欲情させる。 「僕・・・を・・・あなたのものに・・・」 ああ・・・これを言ったら・・・。 「して・・・ください」 その瞬間、待ちに待った熱い猛りが僕の後孔を貫き、一気に奥まで突き入れられた。 「ああっ!」 いくらまだ柔らかいとはいえ、完全に解されていないそこにいきなり太いものを突き入れられ、鋭い痛みが脳天まで駆け抜けていく。けれど、その痛みすら快感と捉えた身体は歓喜に湧き上がった。
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