199人が本棚に入れています
本棚に追加
一章 神様達の井戸端会議
二十畳はあると思われる板間。
扉のある面以外の壁には、祭壇が設置されてある。
どれも手入れが行き届き、瑞々しい榊も供えられている。
しかし三面に神棚が設置されているとは、また変わった光景である。
そんな板間の中央で老若男女が肩を寄せ合って、ごにょごにょと話し合っていた。
計七人。
みな現代の人間と違う、かけ離れた姿をしていた。
まるで古代の日本から出てきたような――
「しかし、藤龍の強情さときたら……」
「ほんにほんに」
「もっと、柔らこうなってもいいと思うのだが」
「優しいお顔をしているのにねぇ」
「見かけと同じとはいかぬものだ」
「神は見かけと中身は等しくなければいかん」
「これこれ、それは致し方なかろう。藤龍は、元は人じゃ」
そうだった、と皆うんうん、と頷く。
その藤龍が淹れてくれた茶を一すすり。
ほうじ茶だ。
一口すすると、炒った茶の香ばしさが鼻腔を通り抜ける。
神力のある樹齢数百年のケヤキの樹からできた板間で、そのせいか弾力があり座っても痛みもないし、寒くもない。
しかし空々しいせいか、どこからとなく冷風が部屋に入りこむと「寒い」という感覚が七人の肩を縮こませた。
「うう、寒い。少々『気』を出して暖めようではないか」
「そうねぇ」
皆、おいおい『気』を出す。
すると、空気が暖かくなり、七人は丸めていた背中を伸ばす。
不思議な容貌に、時代を遡ったような衣装にヘアスタイル。
そして板間の寒々しい空気を温かくしてしまう不思議な力。
七人は、日本では知る人ぞ知る『七福神』達だ。
最初のコメントを投稿しよう!