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「キキーキキッー、ドン、グシャ」
下校中の山上まみの20m先にある交差点で事故の音がした。
「おい、見に行こうぜ」
後ろからきた二人組の男子生徒が、まみを追い越していった。
まみは「あぁ、また亡くなってしまった」と思い、ため息をついた。
あの交差点ではたくさんの人が亡くなっていて、自分が死んだことに気づかず
ずっとその場に留まっている人たちが多くいる。
成仏できない霊たちが仲間にしようと呼んでいるためなのか、そこは多発死亡事故ワースト1の交差点となっている。
まみは幼少の頃から霊感が強く、いろいろな霊的な体験をしていた。
駅への道はあそこの交差点を通った方が一番近いのだが、一人の時には遠回りをしていた。
誰かと一緒の時は仕方なく通るのだが、できれば通りたくはなかった。
そこには首から上がない女性が自転車を押して歩いていたり、血まみれの小学生がいたりするからだった。
次の日、誰もいない教室の匂いが好きな山上まみは、始業時間二時間前に自分の席で本を読んでいた。
朝の早い時間は清められた空気を肺いっぱいに吸い込むと、まみは少し微笑んだ。
友達と一緒に過ごす時間も好きだけど、この窓際の席で読書したり、一人の時間も同じくらい好きだなと思っていると、静かな気配を突き破るほどの大きな音で扉が開いた。
そこには檀上ひながいた。
ひなとは仲が良いのだが、がさつな行動が多い子だった。
こんな早い時間に登校してくる子ではないのに、おかしいなと訝しがっていると
「ねーねー、聞いた?」とひなが聞いてきた。
「なにかあったの?知らないよ」
とまみが答えると、知らない情報を教える優越感に少しひたりながら、ひなが言った。
「駿河くんが交通事故で亡くなったって。昨日、学校の帰り道に…」
最後の言葉をひなが言い終わらないうちにまみが口をはさんだ。
「西側にファミがある、あの交差点?」
ひなが答える1秒の間にそうではないことを強く願った。
しかし、まみの願いも虚しく
「そう…あの交差点」とひなは答えた。
聞いた途端、まみは力が抜けて座っている椅子から滑り落ちそうになった。
「そんな…どうして…」
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