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「行くってどこへ?」
「パンケーキショップの潜入捜査です。駅ビルの一階に新しくできたんですけど、ひとりじゃ入りにくくて。一緒に来てください」
「は、はぁ……」
駅ビルの一階。亮介の勤めるコーヒースタンドの斜め前に、新しいパンケーキショップがオープンした。行列ができていたが、亮介が先に名前を書いておいてくれたので、すぐ店内に案内された。
「未央さん、何にしますか?」
「この抹茶クリームパンケーキにしようかな」
「僕は明太子パンケーキにします」
変わったもの頼むなと思ったけれど、イケメンのことはわからない。毎度のその解釈でさらりと流す。
胸の鼓動が、静かで重い。亮介とはmuseで顔馴染みではあったが、こんなふうに一緒にお茶を飲むなんて嘘のよう。そうなるとはとても思えないくらいの薄い関わりだと未央は感じていたからだ。
毎日コーヒーを買って、彼から英気をもらっていただけだったのに、いまは目の前にいる。美しすぎる顔立ちが直視できず、未央はうつむいたり、窓の外を見たりしていた。
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