2.コラボ企画

2/21
前へ
/225ページ
次へ
「基礎コースの担当をします、篠田です。きょうのレッスンは筑前煮。みんなで楽しくつくっていきましょう。よろしくお願いします」 未央は大手クッキングスタジオの講師だ。駅ビルの中にあり、生徒も多い。 友人のススメで通い始めてどハマりし、勤めていた会社をやめてクッキングスタジオ講師に転職したのは3年前のこと。 レッスンに通い始めた頃は料理下手で、目も当てられないほどだった未央。教室に半年も通うと、それなりになってくるのだから不思議なものだ。先生たちもほめてくれるものだからますます上達し、資格までとってしまった。 担当の先生から、講師へのスカウト? を受け就職。通ってくる生徒とにぎやかに過ごすのはとても楽しかったし、自分に合っている。毎日が楽しくて時間はあっという間だ。 ただ、出会いの場で素直に職業を明かすと、料理教室の先生という色メガネで見られる。それだけが難ありだった。 いつでもどこでも、料理したいわけじゃない。手抜きもしたいし、惣菜で済ませたいこともある。それがわかってもらえず、辛くなって前の彼氏と別れた。あれから2年半経つけど、まだ彼氏はいない。 仕事が楽しい。サクラもいるし、もうこのまま独身でもいいんじゃないかと思っていた矢先の大事件。 きのうは亮介にほっぺにキスされて、おとついは手の甲にキスされて、その前は人工呼吸され……。付き合ってもない人に三日連続キスされることは、人生においてもうないだろう。まだふわふわとその気持ちを引きずっていた。 「先生、できました。 先生?」 「あ、ごめんなさい。はい、それでオッケーです。じゃあ次はこれを……」 なんとかレッスンを終えるも、思わずため息が漏れる。
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4134人が本棚に入れています
本棚に追加