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「未央さん、突然きてごめんなさい。きょうって仕事何時までですか?」
それは亮介であった。立ってるだけで神々しいイケメンが訪ねてきたので、スタッフや生徒が固唾を飲んで見守っている。なんの罰ですか?
「ぐ……郡司くん、ど……どうしたの? 仕事はきょうは3時までだけど……」
未央は周りからの痛烈な視線を感じながら、そつなく会話をするのが精一杯だった。
「あと2時間か……そのあと予定ありますか?」
「いや、ないけど……」
「じゃあ、3時過ぎに迎えにきますね。一緒に行ってほしいところがあるので」
あとで迎えに?
じゃ、と軽く手を振って亮介は隣のお店に入っていった。
キャーキャー周りで騒ぐ声がまったく耳に入らないほど、何が起こったのか理解するまでに時間がかかった。
──3時。なんとかきょうの仕事は終えた。
「先輩、あのイケメン、彼氏ですか?」
「あの人、一階のコーヒースタンドの店員さんだよね? ファンも多いみたいだよ」
玲奈にも後輩や先輩にもあれこれ聞かれたが、ただの知り合いとしかいまは言いようがない。なんとかみんなの口撃を振り切ってスタジオを出ると、向こうから亮介がニコニコ手を振って歩いてきた。
「未央さん、お疲れさまです。じゃあいきましょう」
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