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未央はベットから飛び起きると、あわてて亮介の部屋のドアを叩いた。強盗だと怖いのでフライパンを片手に、足元に消火器を置き、スマホはいつでも110番できるようにスタンバイして。
「郡司くん!? どうしたの? 郡司くんあけて!!」
ドアには鍵がかかっていて開かない。ガチャガチャとドアノブを回すと、バタン!! と急に中から人が飛び出してきて、バッと抱きつかれた。
『「きゃーーー!!!」』
未央の声と抱きついてきた人の声が合わさる。
ガタガタ震えているその人の顔を見ると、亮介であった。
「ちょっと、郡司くん、どうしたの?」
「……き……り」
「え? なに?」
「ご……き……」
「ごき……ってまさか、ゴキブリ!?」
抱きつきながら亮介はコクコクとうなづいて部屋の中を指さした。
しょうがないなという顔で、未央は自分の部屋からゴキブリ用スプレーを持ってきて亮介の部屋に入った。
しんとした部屋の中で耳を澄ませる。
──カサカサッ
バッと振り返り、台所のシンクのところにブツを見つけた未央は、間髪入れずにスプレーをこれでもかと吹きかけた。
強力スプレーの威力は凄まじく、あっというまにブツの回収に成功した。
「郡司くん、もう大丈夫だよ」
玄関の外に出ると、座りこんで震えている亮介を見つけた。未央はやれやれ、とため息をつく。
「もういないから安心して?」
亮介はブルブル首を振っている。
「部屋、入ったら? 蚊に刺されるよ?」
亮介はなかなかそこから動かない。
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