入宮、それは絶望の始まり。絶望の中にも光は差していた。

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三千人の女官であるが、孤独姫のように戦利品として後宮入りする者もいれば、貴族や官僚の娘が父の出世のために送り込まれ後宮入りする者もいれば、宮女狩りと称する略奪行為で無理矢理後宮入りさせられる者など様々であった。 後宮と言えば華やかな女の園に思われるかもしれないが、その実、皇帝の寵愛を受けんとする女同士の醜い争いの繰り広げられる毒蛇の巣も同然。 日本より第一回遣唐使として長安城に入り、その全てを見ている万象は、女同士が皇帝の寵愛を得るために争う姿を見て「蠱毒の術を人で行うとは何たる狂気か」と恐れを覚えていた。 蠱毒の術とは、壺の中に数多の毒虫を入れ、お互いに食らい合わせ、殺し合わせ、最後に残った最後の一匹は、猛毒を持つ毒虫となる。 万象は数多の宮女を見てきたのだが「毒虫」にしか見えなかった。皇帝の絶対的な信頼を得て、女官の教育係になった後でもそれは変わらない。所詮は自分も蠱毒の術を行う下衆の一員かと自嘲する乾いた毎日を送っていた。
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