栄華の始まりは終焉の始まりでもある

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栄華の始まりは終焉の始まりでもある

 生と死の狭間行く痛みを胸の奥に秘めた虚ろなる毎日を送っていた孤独姫であったが、とある出来事を境に大きく運命を変えてしまう。なんと、皇太后が亡くなったのである。死因は化粧に使っていた水銀中毒と言われているが、孤独姫始め、宮中の女官達は「壺や豚にしてきた者達の恨みが返ってきたもの」と思っている。皇太后が亡くなったことにより「母」の喪に服すために皇帝は隣国への戦争を『講和』と言う形で切り上げ、長安へと戻り内政に徹するのであった。夜ともなれば内官が皇帝の寝屋に訪れない日はない。そしてついに孤独姫は皇帝と共に夜を過ごすことになった。  孤独姫は万象より「口頭」と言う形で教わった「かぁますうとら」による房中術の全てを皇帝にぶつけた。皇帝は極楽浄土に召される程の快楽の花園へと沈んでいく…… 孤独姫であるが、皇帝と共に夜を過ごす間、考えることは万象のことであった。目を閉じての想い人は皇帝ではなく、万象である。孤独姫は万象と共に夜を過ごしていると想い込み、精神を保つのであった。  皇帝が母である皇太后の喪に服すこと一年…… いつまでも母の死を悼んでいるわけにはいかないとして皇帝は再び戦いの海へと漕ぎ出して行くのであった。喪に服している間の一年で皇帝は数多の内官や女官を相手にしてきたのだが、男児を成したのは孤独姫ただ一人、他の数多の者たちが成したのは女児のみであった。 孤独姫は生まれた男児に「千象子(せんしょうし)」と、名付けた。その名の意味を知るのは孤独姫のみである。千象子であるが、神が気まぐれでも起こしたのか、万象と瓜二つの外見である。短期間ではあるが、千象子の世話係の任を引き受けた万象本人も驚くぐらいであった。 そのことから孤独姫は一気に上位内官の四妃の一角へと昇進。皇帝不在の間の後宮内での最高権力者へと登り詰めた。権力を手に入れれば他の妃達の嫉妬の炎に巻き込まれるのは必定、食事に毒を仕込まれたり、千象子を殺されかけることも数え切れず。ちなみにだが、千象子を殺しに来たのはまだ十歳にも満たない腹違いの兄である。  自分と千象子以外は誰も信用出来なくなってしまった孤独姫は子を守るために化け物になる肚を決めたのだった…… 自分に不審を覚え牙を向いたとされる女官や宦官に粛清の嵐が吹き荒れる。かつては嫌悪感を覚えていた「壺」「豚」なども「見せしめ」のために必要なことであることに気が付き、いつしか慣れ、平然と行うようになっていた。 以前に千象子を殺そうとした腹違いの兄(皇位継承権第一位)であるが…… 「豚」にされ粛清されてしまった。千象子は厠でそれをまざまざと見せつけられ、こんなことが出来るのは母などではなく「化け物」とあると恐怖を覚え、逐電。その後の行方はようとしてしれない。この時点で千象子は皇位継承権第一位の皇太子の立場へと昇格してしまった。不在にも関わらずにである。
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