栄華の始まりは終焉の始まりでもある

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 上位内官に値する四妃であるが、一番目の妃は民のことを考え、(まつりごと)も民中心であることを推し進めているのだが、贅沢三昧から抜けられずに民を物ともしない宦官達と後述の第三婦人の妨害に遭い発言力は強い方ではない。二番目の妃は病弱で高床(ベッド)からあまり起きることはない。三番目の妃は贅沢三昧だけの何も考えない香水臭い女で、粛清も必要に応じて行い、民のことは物ともしないようで宦官とは気が合う様子で(まつりごと)も宦官任せで口出しはあまりしない。第四妃にあたる孤独姫は千象子と言う王子を産んだ武器(アドバンテージ)のみで、発言力の少ない妃三人を押さえて宮廷内の最高権力者に登りつめたのであった…… 千象子こそ逐電の末に不在と言う状況であるが、病弱で表にはあまり出ることが出来ないという設定を創り上げ、薄布(ベェル)の後ろに置いた等身大の人形(にんぎょう)を皇太子とし、自らは摂政としてこの唐国を牛耳るのであった……  摂政の立場になった孤独姫はもはや女帝。草や木の一本、長安城の広場一面に立錐の余地もない程に立つ兵士たち、中庭に作られし享楽の花園、そして長安の都…… 全てが孤独姫のものとなった。そんな彼女であるが、ただ一つないものがあった。 真実の愛である。 夫とせし皇帝は(いくさ)と国の繁栄しか頭にないし、孤独姫も皇帝に対する愛は微塵もない。 女帝として長安の民こそ愛しているが、孤独姫が求める女としての幸せを満たす愛ではない。 そして…… 最後に求めたのは幼き時より尊敬し愛し焦がれた、女大学時代の老師である西京院万象だった。万象は日本から来た遣唐使と言う立場で国賓も同然、東方の小国とは言え、下手に手出しをすることは許されない。孤独姫は万象を求めていたが、手に入れ得られずに(こまね)いていた。  そんな中に訪れた「遣唐使廃止」の吉報。万象は遣唐使でなくなり風来坊となる。相手が風来坊であれば結ばれるにも問題はない。孤独姫は万象に「森羅万象(ありとあらゆるもの)」を与え、自らの物にしようとした。だが、どのような条件を提示しても万象は首を縦に振ることはなかった。
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