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「今日さ、千尋、デートだったんだよ」  鞄から取り出したハンカチで髪を絞りながら、絢が話始めた。 「髪も一緒に可愛くセットしてさ、待ち合わせにびしょびしょで行くわけにいかないっしょ」 「それで、嘘ついたのか」 「千尋は気にしいだからさ、帰る方向違うのに私が一緒に帰っても気にするし。私が傘持ってないなんて知ってたら、絶対先に帰ったりしないよ」  傘がゆらゆらと揺れた。右手に力を入れ直す。  少し悩んでから、昭仁は頭の中のことを口に出した。 「デートの相手、佐々木だろ」 「……やっぱり津田は知ってるよね」  だよねぇと続けて、絢が結んだ唇を無理やり横に引いた、ように昭仁には見えた。  今日、佐々木は部活もそこそこに駅に向かっている筈だった。  佐々木は周りの誰にも、自分の恋愛の話は滅多にしない。昭仁にも、デートなんだ、とひと言言っただけだ。  でもそれが本当に相手を大切にしている感じがして、昭仁もこの件については佐々木をからかったりはしない。 「2人を応援している私としてはね、そのデートのサポートをね、ちょっとしていた訳ですよ」
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