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※※※
「ダウト」
「あー、くそっ。何で昭仁はわかるんだよ」
昭仁の隣で椅子を前後逆にして座っている佐々木が、その背もたれを持って体を揺らした。
昼休み。夏休みが明けると同時に佐々木が持ってきたトランプを発端として、クラスの男子生徒の中でにわかにトランプブームが到来していた。
ただ既にババ抜きや大富豪といった基本的なものは遊び尽くした感があり、今日はまだ遊んでいなくて全員がルールを知ってる、という条件に敵ったダウトをしていた。
「もう1回」
明るい茶色の髪を自らワシワシと掻いてから、佐々木は真剣な表情で中央の机にトランプを配っていく。
ダウトは、ジョーカーを除いた52枚のカードを使う。
1人ずつカードをA→2→3の順で裏向きにして中央に出して山を作っていくが、手持ちに順番のカードがなければ、申告と異なるカードを出す。
他のプレイヤーは出されたカードが申告と違う思ったらダウトと宣言、嘘と見破られたらペナルティ、今まで中央に溜まっていたカードを手元に引き取る。
反対に順番通りのカードが出されていた場合はダウトと宣言したプレイヤーが、中央に溜まったカードを引き取る。手札が早くなくなった人が勝ちだ。
このゲームのポイントは、自分の順番に回ってくる手札を先読みしながら手持ちのカードを捌くことと、もう1つ。いかに上手に嘘をつくか、だ。
そのどちらも、特に嘘をつくことが佐々木はとにかく下手だった。
嘘をつく時の佐々木は仕草や表情が圧倒的に不自然なのだ。
それは本来なら称賛される筈の佐々木自身の裏表がなく単純明快という性格の現れなのだが、残念ながらこのゲームでは不利にしか働かない。
「佐々木が弱すぎる」
昭仁が正直にそう言ったところで隣に人が立つ気配がした。横を向くと、目の前にすらりと長い足が見えてぎょっとする。
「そこ、私の席なんだけど」
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