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 視線を上げると昭仁と佐々木の間に、岡島絢(おかじまあや)が立っていた。 「あ、すまん」  絢に指摘された友人が、自分の座っていた椅子から立ち上がろうとする。 「あ、いいのいいの、別に。ごめんちょっと鞄の中から財布取りたかっただけだから」  絢は両手を前にしてそれを制すると、 「トランプ、何してんの?」  と、佐々木の手元のカードを覗き込むふりをした。肩までの艶のある黒髪が、さらりと流れる。 「ダウト。見るなよ」  佐々木は手元のカードを胸元に引き寄せる。 「見ないって、見てどうなるのさ」  ただ絢はそこから少し考える素振りをして、 「ねぇ、そのまま席使っていいからさ、私にも1回やらせて」  と、言った。  その発言に、途中からで良ければと絢の席を使っていた友人が自分の手札を絢に全て譲った。絢は別のところから椅子を引っ張ってきて、そのまま昭仁と佐々木の間に座る。 「なに、佐々木が弱いって?」  そう言いながら絢は真剣な表情で手札を並び替える。 「とってもね」 「うるせーぞ、昭仁」  いくら時代が進んだと言っても、こうして男子の中に女子1人、すんなりと違和感なく加わることができるのは特別な能力の筈だ。  いつだって絢からも、佐々木と同じ陽の匂いがする。 「じゃあ、続きから。4」  そう思いつつ昭仁が手元のカードを中央に出す。ちなみに嘘だ。4はなかったから8を出した。だが誰に指摘されることなく、隣の絢に順番が回った。 「5」 「はい、ダウトー」  カードを出したと同時に、佐々木が張り切って声を上げた。しかし絢は動じない。 「はい、残念。嘘はついたら駄目ですからね」 「······ま?」  引っくり返された綾のカードは5で、数枚溜まっていた中央のカードは項垂れている佐々木の手元へと早々に収められた。
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