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 そこから暫くだれもダウトと言わなかった。中央のカードが溜まっていく。 「2」 「3」 「4」 「5」 「6」  気づいた頃には、絢の手札は最後の1枚になっていた。 「7」 「ダウト」  佐々木が言わなければ、昭仁が言っていたと思う。  正直、このダウトというゲームで、最後の1枚が本当に申告通りのカードで綺麗に上がれることなんて滅多にない。だから何だかグダグダになって終わったり、最後の1枚であることを悟られないように出した者が勝ったりと、本質とは少し離れたところで決着がつきがちだ。  ただ、今回は違った。 「ぶー」  してやったり、という顔で絢が笑って、中央に置かれたカードを長い指がゆったりと捲る。  申告通りの7。 「今日の私は、嘘、つかないですから」 ※※※  脳内の再生が止まる。そうだ、丁度そこでいつまでも戻ってこない絢のことを友人が迎えに来た。そのまま颯爽と勝ち逃げしていった絢が抜けてからも昭仁たちは昼休みが終わるまでダウトを続けたが、残りの面々では結局勝負がつかなかった。  教室を出るのがぎりぎりになったから、多分慌てていた佐々木は誤ってそのトランプを次の移動教室に持って行ったのだろう。 「トランプの持ち込みくらい許すけどさ、なんで移動教室まで持って行ってるんだよ、しかもご丁寧に名前まで書いて。自分が忘れるの予知でもしたのか?」  昭仁は苦笑いを返すしなかない。  それが佐々木だから、と言ったら千葉はわかってくれるだろうか。
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