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出来る事なら真実を伏せたまま、このまま今日子と暮らしていきたい。
この小説を捨ててしまえば叶うだろうか。
しかし、小説を集学館で出す事が黒田との約束だ。
俺の為に編集者人生の全てをかけて支えてくれた黒田を裏切れない。
真奈美と黒田がつき合っていると聞けばなおさらだ。
黒田を裏切れば、俺と黒田の間で真奈美にも辛い思いをさせる。
はあ。俺はどうしたらいいのか。
何度も完成した小説を読み返すが答えは出ない。
考えるだけで胸が痛い。
胃もキリキリと痛む。
今日子を手放したくない。
俺はどうすれば……。
うっ、腹が痛い。なんだこの痛みは。
激しい痛みに椅子から崩れ、床に倒れた。
俺は死ぬのか?
「先生!」
今日子の声がした。
書斎の床でうずくまっていると、今日子が駆けて来た。
ダメだ。今日子。来るな。小説の原稿が床に散らばっている。
どうか読まないでくれ。
俺の元から去らないでくれ。
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