11話 先生の隠し事

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 先生の家の前にタクシーが停まっていた。きっと黒田さんだ。  鍵は開いているから黒田さんが中にいるんだ。  二階の先生の書斎に黒田さんはいなかった。  床には文字が印刷された紙が散乱している。  倒れる直前に先生が読んでいた物のよう。  もしかして新作の小説?  一枚だけなら読んでもいいよね。  ああっ、この文体は先生の小説だ。しかも読んだ事のないやつ。やっぱりこれは新作なんだ。  望月かおるの新作がここにある。  全部読みたい。  紙を拾い集めようとした時、「葉月さん!」と呼ばれた。  黒田さんの声だ。 「あ、違った。水森さん。どうされたんですか?」  振り返ると右手にスマホを持ち、やや呼吸の乱れた黒田さんがいた。私がいる事に気づいて駆けつけて来たんだろか。 「先生の荷物を取りに来たんです。黒田さんでは全部わからないでしょう」 「助かります。では、寝室の方お願いできますか? 私は先生の仕事関係の道具をまとめますから」 「ええ、わかりました」  床に散らばっている原稿を拾い集めてから行こうとしたら、「それは私がやるので、すぐに寝室で用意して下さい」と言われた。  先生の新作、読みたかったのに残念。
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