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上原さんをリビングに通すと、懐かしそうに室内を見回していた。
「相変わらず素敵なお宅ですね」
ソファに座りながら上原さんが言った。
「そうですね。先生のおじい様が建てたお家らしいですけど」
「望月先生のおじい様は貿易関係の会社を経営していたんですよね。今は先生のお父様が社長ですよね」
先生のお父さんの事は聞いた事がなかった。先生、上原さんには話していたんだ。アシスタントとして知らなかった事が少しだけ悔しい。
「そうなんですか。紅茶をお持ちしますね」
「お構いなく」
そう言われたけど、今のアシスタントとしてちゃんと対応したかったから、上原さんに紅茶を出した。
「いただきます」
薔薇の柄の金の縁のティーカップを持つと、ありがたそうに上原さんが口をつけた。
私も紅茶を飲んだ。温かい物を飲むとほっとする。
「それで黒田さんのお使いというのは?」
紅茶を飲んだ後も上原さんが中々切り出さないからこちらから聞いた。
「あ、すみません。あの、実は黒田さんからというのは嘘でして。ここに来たのは葉月さんの事が心配で。先生の小説の事を知ってショックを受けているのではないかと」
先生の小説の事って何?
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