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驚いて上原さんを見ると、丸顔の小さな顔がゆっくりと頷いた。
「私も最近まで知らなかったんですけど、先生の為に集められたアシスタントは恋愛小説を書く為に先生と恋愛するヒロイン候補だったみたいなんです」
恋愛小説を書く為のヒロイン候補……。
ドクンと心臓が大きく脈を打った。
企画書を持つ指が震える。
「葉月さん、先生に口説かれませんでしたか?」
先生の言葉が蘇る。
――お前の事が好きなんだよ。
――ガリ子。お前は魅力的な女だよ。
――朝までお前を抱きたい
――好きだよ。好きだから抱きたい。
今思うと、先生が私に好きだと言い出したのはパリに行った辺りからだった。あの辺りから不自然な程、先生が優しくなった。
――俺との契約が終わる9月30日まで恋人でいて欲しい。
9月30日まで恋人でいて欲しいだなんて変だと思った。でも、この企画書を見て先生が期限付きで恋人でいて欲しいと言った意味がわかる。
先生は恋愛小説を書く為にヒロインが必要だったんだ。だから私にあんな事を言ったんだ。
じゃあ今までの事は全部小説の為?
私に優しくしてくれたのも、抱いてくれたのも、愛していると言ってくれたのも。
嘘……。
そんな訳ない。だって先生は本当に愛してくれた。
こんなの嘘!
「上原さん、この企画書はあなたが作ったんでしょう?」
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