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「私が望月先生とパリに行ったから嫉妬したんでしょう? 黒田さんからも、望月先生からも、上原さんが望月先生に何をしたか私聞いているんだよ」
上原さんが大きな瞳を潤ませた。
「酷いです。私は本当に葉月さんを心配しているのに。どうして信じてくれないんですか? これは私じゃなくて黒田さんが作ったんですよ。信じられないなら黒田さんに聞いて下さい。黒田さんは全部知っているんですから」
黒田さん……。
そう言えば前におかしな事を言っていた。
――あの、葉月さんにお願いがあります。
――もし、先生の小説が葉月さんにとって許せないものだったとしても、先生を責めないであげて下さい。先生にとって仕方がなかったのです。全て悪いのはこの黒田です。怒るなら私に怒りをぶつけて下さい。どうかお願いいたします。
まさか……。
先生の小説が私にとって許せないものって、私を騙して書いたからって事? 黒田さんが自分が悪いと言っていたのはこの企画書を書いたから?
私、本当に騙されていたの?
先生が私を愛してくれたのは嘘だったの?
「葉月さん、ショックですよね。でも、私が言った事は事実です。葉月さんは先生の小説の為に利用されていたんです」
小説の為に利用されていた……。
心臓が締め付けられる。
「嘘よ。絶対にそんなの嘘」
先生に利用されていたなんて信じられない。
先生は人の心を弄ぶような人じゃない。絶対にそんな事しない。
だからこれは嘘よ。
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