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上原流美……。
ああっ! 夜中に俺のベッドに忍び込んで来た上原専務の娘か!
「お前、なんで来た! 俺の所は出入り禁止だと言っただろ?」
上原から距離を取るようにベッドの上で思わず身を引いた。
「そんなに怯えないで下さいよ。黒田さんの代理です。今日、黒田さん忙しくてこちらに来れなくて。だから今日は私が先生のお世話をさせて頂きます」
「世話などいらん。帰れ」
「そんなつれない事言わないで下さいよ。とりあえずお花を花瓶に生けてきますから。先生、ひまわりがお好きだったでしょう?」
「好きじゃない」
「えー、前はひまわりが好きだって言ってたじゃないですか」
「お前がしつこいから適当に言っただけだ」
「適当だなんて酷い。でも、先生のそんな所も好きですよ」
ニコニコと上機嫌に笑うと上原は勝手に持って来たひまわりの花束を花瓶に生け始めた。
まあ、病室に花があるのは明るくなっていいか。少し落ち込んでいたし。
「それが終わったら帰れよ」
「先生、つれないですね」
「ハッキリ言うがお前に興味はないんだ」
「憎まれ口を叩けるぐらいお元気で安心しました。もう編集部のみんなで先生の事を心配していたんですよ。あっ、私の父も心配していました。望月先生あっての集学館だっていつも言っているんですから」
「白々しい。俺の事はそろそろ切るつもりだったくせに」
「何言ってるんですか。そんな訳ないじゃないですか」
「書けない小説家は切り捨てられる。弱肉強食の世界だからな」
「集学館と先生は切っても切れない仲ですよ。あっ、お花できました。先生、どこに飾ります?」
「窓際の方に置いといてくれ」
「はい。ベッドから見える位置に置きますね」
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