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もう少し私に勇気があれば、小説の事を聞いて、先生の本当の気持ちを確かめる事が出来たのかもしれない。
まだ先生の口から小説の事を聞いたわけじゃない。
私への気持ちが偽物だったと聞いた訳でもない。
だけど、聞いたら立ち直れないぐらい落ち込むのを知っている。
私もひなこさんの日記を先生の留守中に読んでしまった。
上原さんが言った通りの事が書かれてあった。
先生の心に私はいない。
いるのはひなこさんと文君だけ。
だから何も聞かない。
これ以上、傷つきたくないから。
最後まで先生に辞める事は言えなかった。
代わりに手紙を残して来た。
今までのお礼と、新しいアシスタントが来るから心配がいらない事を書いた。
先生にとって私は替えがきく存在だから、私が辞めてもきっと先生が困る事はない。
さようなら、先生。
玄関の扉を開けた。
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