12話 契約終了

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 もう少し私に勇気があれば、小説の事を聞いて、先生の本当の気持ちを確かめる事が出来たのかもしれない。  まだ先生の口から小説の事を聞いたわけじゃない。  私への気持ちが偽物だったと聞いた訳でもない。  だけど、聞いたら立ち直れないぐらい落ち込むのを知っている。  私もひなこさんの日記を先生の留守中に読んでしまった。  上原さんが言った通りの事が書かれてあった。  先生の心に私はいない。  いるのはひなこさんと文君だけ。  だから何も聞かない。  これ以上、傷つきたくないから。  最後まで先生に辞める事は言えなかった。  代わりに手紙を残して来た。  今までのお礼と、新しいアシスタントが来るから心配がいらない事を書いた。  先生にとって私はがきく存在だから、私が辞めてもきっと先生が困る事はない。  さようなら、先生。  玄関の扉を開けた。
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