1話 憧れの先生は……

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 広告を見ると三ヶ月の住み込みとあった。  純ちゃんは長期出張で上海に行っているし、丁度いいかも。  でも、一応純ちゃんに相談してからの方がいいかな。  ――いちいち僕に聞くなよ。  頭の中に純ちゃんの冷たい声が響いて、胃がギュッと締め付けられる。  結婚したばかりの時はなんでも相談してって純ちゃんに言われたから、何でも純ちゃんに相談して決めていたけど、最近は相談すると純ちゃんは不機嫌になる。私が純ちゃんに寄り掛かり過ぎたせいかもしれない。  自分の事ぐらい自分で決めなきゃ。  丁度、仕事を探し始めた所だし、これは絶好のタイミングかも。純ちゃんが出張している間だったら、住み込みで働いても問題ないよね。  まあ、採用される所まではいかないだろうけど、ここから職探しを始めるのはいいかも。よし、電話しよう。  早速、集学館にアシスタントの事で電話すると、面接日がその日の夕方5時に決まった。近所のコンビニで3枚セットの履歴書の用紙を買ったけど、全部書き損じて、修正液で直すのも失礼な気がして、またコンビニで履歴書を買い、4枚目でようやく履歴書を書き上げた。履歴書なんて書くのも久しぶり過ぎて随分と手こずってしまった。  気づくと時間はもう午後4時。早くスーツに着がえなきゃ。お化粧もしなきゃ。洗濯物も取り込んでいかないと。  部屋中をバタバタと走り回り、グレーのパンツスーツに着替えて、マンションを出たのはギリギリの時間だった。
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