1話 憧れの先生は……

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「えーと、質問に戻ります」  黒田さんに家事能力とピアノの事を聞かれ、料理も掃除も一応主婦として五年間やって来た事と、音大を出た後は大手楽器店直営のピアノ教室で講師をしていた事を話した。 「じゃあ、合格です」  黒田さんの言葉にびっくり。  えっ、こんなに簡単に決まるの? 「い、いいんですか?身長と体重だって一年前の健康診断で測定したきりなんですが」  身長は変わってなくても、体重は2キロ、いや、3キロぐらい増えているかも。ここ2、3日純ちゃんがいない事を忘れて、ついご飯を作りて過ぎて、2人分食べちゃってたんだよね。今日から夕飯は少なめにしないと。  目が合うと、盛大に黒田さんが笑い出した。  私、何か変なこと言った? 「あなたは正直な人ですねー。大丈夫ですよ。見た目に問題ありませんから。私はこれでも百人以上の方と面接して来たんですよ」 「ひゃ、百人も? そんなに応募があったんですか?」 「ええ。先生は売れっ子の作家ですから、それなりに反響はあったんですけど、でも、残念ながら見た目と年齢でほとんどの方がアウトでした。あと、ピアノですね」 「ピアノ?」 「最後に望月先生の前で弾いてもらうんですけど、皆さん子供の時に習った程度なので望月先生が求めてるレベルじゃなくて」 「え! 望月先生の前で弾くんですか!」
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