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ミーシャ視点
―――バーズがフェリオットに言ったことって・・・?
少しずつ気分もよくなり、冷静に考えてみると先程のバーズの言葉はフェリオットを助けるためのものだと分かった。 ミーシャ自身バーズのことをよく知らない。
横暴で姫を殺させようとした悪人、そのようなイメージを持っていたがただ純粋に悪い人間ではないよう思えるのだ。 そうすると考えてしまうのはフェリオットのこと。
―――確かに、私もろとも第一王子を殺そうとしていたことは許せない・・・。
―――だけどそれも五十歳以上の人間を全て殺すという狂気を止めるためだったのなら、理解はできる・・・。
―――お母さんを守ろうとしたんだね。
ミーシャにとっては自分の母親も憎悪の対象だ。 だが全ての母となる女性を恨んでいるわけではない。 というのも、奴隷として売られるまでは母のことを慕っていたし感謝もしていた。
あの日を境に全ては変わってしまったが、フェリオットが母を助けたいといった気持ちは理解できた。
「本物の姫じゃないっすか!」
「本当だ! マジもんの姫だ!!」
無事船へ着くと多くのバーズの部下たちに迎えられた。
「本物じゃねぇよ。 オークションで買った俺の女だ」
―――姫・・・?
そこでようやくミーシャは自分が姫に似ているからバーズに買われたのだと知った。
―――だからフードを被らせたり、城へ入っても変な目で見られなかったんだ・・・。
―――思えばオークションの時も私の顔を見て驚かれたな。
フェリオットがバーズに言う。
「母さん以外にも、隠れていた五十歳以上の方を連れてきてもいいですか?」
「いいけど早くしろよ。 つか、どうして乗せる前提で言うんだよ・・・」
フェリオットは走って街へ戻っていく。
「お前、体調は大丈夫か?」
「はい・・・」
「こんな危険なところにお前をいさせるわけにはいかないからな。 俺たちに付いてくるんだ」
その言葉は素直に有難かった。 ミーシャ自身一人で生きていく術を持たない。 それにこんな薄気味悪い国に残りたくはなかったのだ。
小さく頷き少し待つとフェリオットが何人かの年寄りを連れてやってきた。 フェリオットは最後尾で誘導している。
「渡せる礼は少ないんだけど・・・」
フェリオットは大量の金貨を抱えていた。 腐っても第二王子ということらしい。
「・・・へぇ。 金をくれるのか」
「危ない!!」
バーズの言葉を聞きながらフェリオットを眺めている時、異変に気付き叫んでいた。 フェリオットの後ろから数人の警備の者が見え矢を放っていたのだ。 それに気付いたバーズも大声を出す。
「マジだ! 第二王子急げ! 追手が来ているぞ!!」
「えッ!?」
どうやら逃げようとしているのに勘付かれたらしい。
「早く! 早く乗って!!」
フェリオットは自分よりも人々を誘導するのを優先した。
「そんな、誘導している場合じゃないのに・・・」
心配していると更に数本の矢が飛んできた。
「くッ・・・」
そのうちの一本が命中しフェリオットの足に刺さってしまった。 見る見るうちに地面が赤く染まっていく。
「フェレ!!」
ミーシャは叫んだ。 フェリオットも声を捻り出す。
「僕のことはいいから! みんなを連れて、早く遠くへ・・・ッ!!」
その声と同時に後方から爆音が響き、視界の先にかかっていた橋が崩れ落ちていた。 どうやら船から大砲を発射したようで、追手の行く先の橋に見事命中させたのだ。
「バーズ・・・!」
発射させたのはバーズだったようだ。 バーズは船を降りフェリオットを支える。
「どうして・・・」
「俺は老人の世話をする約束はしてねぇよ。 アイツらを導くのはお前の仕事だろ? しっかりやれや」
そう言ってバーズはお年寄りを見る。 その光景を見てミーシャは安堵の表情を浮かべた。
―――・・・バーズはとても優しい人だったのね。
バーズはフェリオットを船へと乗せると出航した。 バーズの部下たちが他の船に細工でもしていたのか、追っ手は船を出して追いかけてくることができなかったようだった。
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