13.動機

27/29
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
知らないって言ってるが、最近、会ったような言い回しだなと、なんか変だぞコイツと感じたのだろう。 「橋江はカンが鋭いからな」 私は言った。 「だーな。4年前、秋地と会った時って、ガンがどうのこうのって言って無かったし、通院してる話しもして無かった。本当、病人には見えなかった。 だから信じられなくて、話し聞いた時、少し、涙ぐんじゃった。 橋江はそこも見逃さなかったんじゃないかな? アレ?間宮って、泣くほど当時、秋地と仲良かったっけ? ってね」 そうか、それで橋江は、遺書を手に入れた時、秋地と同様の動機がある間宮も視野に入れていた。 それを確かめる為、「秋地が他に会った旧友は居なかったか」とカユミを訪ねた。 カユミの口から、間宮の名が出た時、橋江は「ビンゴ」と確信を得たのだろう。 犯人は間宮の方だな………と。 「所でサ、ムーラ、オマエ、本当にオレの会社とウチ行って、かーちゃんにアリバイ訊ねたのか〜?」 「えっ!」 フイをつかれ、ドギマギしてると 「会社のツレから、オレにそんな話しは入ってこなかったし、かーちゃんもフツーだったし」 と、彼は私をジロっと横目で睨むと、私の反応をうかがった。 「ゴメン、アレウソ。どっちも行ってない」 私はハニカミながら、正直にバラした。 「やっぱりな〜。まーたハッタリに引っかかっちゃったよ〜。本当はワリーこと出来る人じゃないんだよオレって」 間宮は自分を窘めるように、右手で自分の頭をポンポン叩いた。 そして真顔で 「で?ムーラはこのオレをどうする? 今、オレ、ムッチャ弱い立場だからな」 と言った。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!