19人が本棚に入れています
本棚に追加
「ガンと聞きましたが」
と言うとおばさんはコクッと頷いた。
「4、5年前かな?勤め先の健康診断でひっかかってね。二次検査で大腸の内視鏡検査したらポリープがあって、病理検査したら悪性だって。大腸ポリープは、つんでとったんだけど、他の臓器にも移転してて、入退院を繰り返してたわ」
「そうですか」
「で、おととしの11月3日………」
おばさんはそこで言葉をつまらせた。
一昨年の11月3日、秋地は帰らぬ人となったのだ。
私は次になんと言葉を出して良いか、考えていたが、少し沈黙のアト
「彼のアルバムとかあれば、見せていただくことはできますか?」
と言ってみた。
「いいですよ。ちょっと待っててね」
ちょっと涙ぐんでいたおばさんは立ち上がり、隣の部屋へ消えていった。
秋地の一生を見てみたいと思った。
彼がどんな人生を送って、そして死に至ったか。
少しして現れたおばさんの手には、3冊のアルバムがあった。
彼女は青、赤、黄色のその3冊をちゃぶ台の上に置いた。
「それでは拝見します」
私はまず青のアルバムに手をかけた。
幼い頃の写真で、白黒写真も数枚あった。
小学に通う頃になると、私も知っている人物も出てきた。
私が登場している物は私も持っている。
小6の1学期に行った修学旅行などは、3枚ほど私も一緒にいるヤツもあった。
ピースする時、秋地は3本指を立てた。
なぜ、2本指じゃなく3本指を立てるのかと、ある時聞いたことがある。
すると彼は
「今のムーラみたいに、なぜ?と興味を持ってくれる人がいるからサ」
と、嬉しそうに答えた。
「なるほど」と素直に思った。
ペラペラめくっていくと、2枚の写真に、憎たらしい浜岡も写っていた。
私は写っていない為、持ってはいない。
何が面白くてニタニタしているのか判らない浜岡だか、やはり懐かしい。
アノ、私のチクリ事件以降の写真はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!