7,友の人生

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「ガンと聞きましたが」 と言うとおばさんはコクッと頷いた。 「4、5年前かな?勤め先の健康診断でひっかかってね。二次検査で大腸の内視鏡検査したらポリープがあって、病理検査したら悪性だって。大腸ポリープは、つんでとったんだけど、他の臓器にも移転してて、入退院を繰り返してたわ」 「そうですか」 「で、おととしの11月3日………」 おばさんはそこで言葉をつまらせた。 一昨年の11月3日、秋地は帰らぬ人となったのだ。 私は次になんと言葉を出して良いか、考えていたが、少し沈黙のアト 「彼のアルバムとかあれば、見せていただくことはできますか?」 と言ってみた。 「いいですよ。ちょっと待っててね」 ちょっと涙ぐんでいたおばさんは立ち上がり、隣の部屋へ消えていった。 秋地の一生を見てみたいと思った。 彼がどんな人生を送って、そして死に至ったか。 少しして現れたおばさんの手には、3冊のアルバムがあった。  彼女は青、赤、黄色のその3冊をちゃぶ台の上に置いた。 「それでは拝見します」 私はまず青のアルバムに手をかけた。 幼い頃の写真で、白黒写真も数枚あった。 小学に通う頃になると、私も知っている人物も出てきた。 私が登場している物は私も持っている。 小6の1学期に行った修学旅行などは、3枚ほど私も一緒にいるヤツもあった。 ピースする時、秋地は3本指を立てた。 なぜ、2本指じゃなく3本指を立てるのかと、ある時聞いたことがある。 すると彼は 「今のムーラみたいに、なぜ?と興味を持ってくれる人がいるからサ」 と、嬉しそうに答えた。 「なるほど」と素直に思った。 ペラペラめくっていくと、2枚の写真に、憎たらしい浜岡も写っていた。 私は写っていない為、持ってはいない。 何が面白くてニタニタしているのか判らない浜岡だか、やはり懐かしい。 アノ、私のチクリ事件以降の写真はなかった。
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