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1,1枚のハガキ
「あなた、何か来てたわよ」
パート先から帰って来た妻ミハルが、リビングでソファーに腰掛けてテレビをながめていた私に、1枚のハガキをよこした。
それは往復はがきであった。
手渡されたそれの差出人を見る。
「橋江ナシオ」
私の頭が橋江性を探すと、36年の人生の中で、ただ1人浮かんだ。
小学生の時の同級生だ。
それは同窓会の通知だった。
「ほう〜。同窓会やるんだ」
私が呟くと、隣に座っていた4歳の1人娘マミが、私の顔とそのハガキを交互に見ながら
「何、何」
と、いつもの、あどけないカワイイ笑顔を見せた。
「パパの子供の頃の友達が、みんなで会うよって言う、お知らせが来たんだよ」
「ふ〜ん」
判ったのか判ってないのか首は傾げたが、次の質問は無かった。
「アラ、同窓会なんだ」
私の声が聞こえていたらしく、台所に立ったミハルが、背を向けたまま言った。
「うん。小学5年のね」
と、ハガキを眺めていると、隣の和室から私の母親がフスマを開けて出て来た。
そして
「ミハルさんお帰り〜」
私のワキを抜けて、台所の妻に寄って行った。
「お義母さんただいま」
妻はいつものように、私の時の対応とは違う気を使ったトーンで返した。
「昼間、カレー作っておいたんで、それは火を通すだけよ」
と、母が言うと
「助かります」
と、妻は軽く頭を下げ、そのナベを火にかけた。
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