軒先で出会った二人

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 テレビ画面の天気予報を見ているわたしに羽田が、心配げに声をかけてくる。 「最近顔色良くないよ?どうしたの。奈緒」  滝のような雨が降るザーザーと、稲光が鳴る。轟音で消される声がわたしにははっきり聞こえるの。貴方の低い声。 『いい人ぶって満足してたのお前だろ!!』  ザーザーと雨粒が窓ガラスを叩いてく。彼がヒモ男だって許せた。主夫をしてたから。許せなかったのは何人も女がいたこと。問い詰めると罵倒され、彼の手が振ってきた。 「夕立だからね」  羽田が身震いしたのを覚えてる。編集長はしばらく休めと言っていたじゃない。 「具合が悪いから帰るね」 ※※※※  耳をつんざく雷鳴に震えていたわたしはいない。駆け足で軒先に逃げてく人を見て、わたしたちが重なる。思えばあれがピークだったかもしれない。衣服が雨で濡れていっても、ドキドキしてるのは何故? 「帰るなら連絡ぐらい入れろよ!!」  不機嫌なあなたの顔はわかりやすい。妙に綺麗な玄関口、慌てて溢した液体が床をキラキラ光らせてる。二つ分のカップを仕舞い忘れたらしい。 「わたしは?」  あなたが泊まる先がない子犬のように震えてたから、匿ってあげたのに。わたしが仕事を紹介したお店なんて一回も行ったことがない。全てあなたのためなのに・・・  止めて欲しい、今なら間に合う。雨で濡れたわたしを抱きしめてくれればよかったのに。 「しらねぇよ!!」  稲光で明るくなる室内、あぁそこにいるのね。  ポタポタ、ポタ、  彼が逃げてく先を追いかけて、濡れた床に足を滑らせた。  ドーーーーーーーーーン!!  わたしが転んでも振り返りもしない。痛みが憎しみに変わる。 「あなたが好きな人がいるじゃない!!」  ベランダで雨宿りをしている図々しい女。守る人はそこにいる。 「ま、待ってくれ!!」  彼をベランダに追いやり、鍵を閉める。ドンドンとうるさい音がする。  ドンドン、ザーザーザー・・・ 「わたしはいい人ってあなたが言ったんじゃない」  ベットに行き包まってあの人の帰りを待つの。 「はやく帰ってきてよ・・」  ベランダの窓が雨粒で激しく打ち鳴らされる。わたしは指輪を見つめながら、震え笑う。
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