虹のふもとの傘やさん【シリーズ1作目】

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 思わず声に出していったとき、暖簾をかきわけて、奥から小さくてふくよかなおばあちゃんが出てきた。  青いワンピースに白いエプロンをして、ニコニコと笑っている。 「ひとつお買い上げかい?」 「え、本当に5円なんですか?」 「そうじゃよ。」  スーパーの入り口にあるようなアルミの傘立てに、きっちりと1本ずつ傘がささっている。白い取っ手の透明なビニール傘。 「すみません、これってリサイクルだから安いとか?中古品ですか?」 「いやいや、新品じゃよ。ただ、買う人を選ぶだけでね。」 「買う人を選ぶって?」 「そうじゃよ。傘が嫌がっていたらここから抜けないわい。どれ一本、抜いてみな。」  おばあちゃんはそういうと傘立てを指さした。  どれも同じ傘だし、そんな事あるわけないと、手前の傘を引き抜こうとした。    え?あれ?  傘立てに入っているだけなのに、ボンドでくっついているかのようにびくとも動かない。  「ほれほれ、その傘じゃないってことだわさ。」  あれ?じゃあ、隣の傘は?ムリ?次は?これも?  えっ、どういうこと?
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