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私は次々と傘をぬこうとして引き抜いたが、どの傘もちっとも動いてくれない。
結局、表に置いてある傘は、一本も抜けなかった。もう20本くらいためしてみたのに・・。
「おばあちゃん、どれも抜けない・・・。どういうこと?」
「おやおや、ちょっとまってておくれ。」
おばあちゃんは、いったん店の中に引き返すと、丸い筒の中に入ったビニール傘をひきずりながら、よいしょ、よいしょと持ってきた。
「ここにあるのはどうだい?表に置けなくて、ひとつにまとめておいたんじゃわい。」
こうなったら意地でも、一本でも抜いてみせるんだから!
私は一番手前の傘の白い取っ手を“えいっ!”と持って上に引き上げた。
とたんに、今までとは違う軽い感覚が!
あっという間に、アスファルトに尻もちをついていた。
「おやおや、大丈夫かい?」
ほっほっと笑いながら、手を差し出してくれたふっくらとしたおばあちゃんの手を握りながら、立ちあがった私は、
「抜けた!これ買います!」
と大きな声で500円玉をだした。
「はいはい、ちょいとおまち、おつりをもってくるからね。」
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