虹のふもとの傘やさん【シリーズ1作目】

8/8
前へ
/8ページ
次へ
 玄関のドアを勢いよく開けるとお母さんののんびりした声がしてきた。 「雨が降ってきたけど、大丈夫だった?傘、買えた?・・・って、傘もってどこ行くの?」  私は傘を開いて持ったまま、靴も放り出して、風呂場に直行する。  早く早く!急げ、急げ!  お母さんはお風呂の残り湯を洗濯につかう。確か今朝も使って、まだ水を抜いていないはず。  あった!  私は風呂場に入ると、勢いよく傘をバシャっと水の中に突っ込んだ。傘は、まるで測ったかのように、すっぽりと風呂の中に入った。 「ぴょんきち!」  叫んで覗き込んだ風呂の残り水の中から、ぷかんと緑色の顔が出てきた。 「やった!やった!」 「どうしたの?さっちゃん!」  お母さんの足音がする。  どこから話そう!  お母さん、あのね・・・・。  ーそのころ、傘やさんのおばあちゃんは雨上がりの空を見ていた。 「虹がかかっとる。あの子はご縁があったんだね。どれ、また移動するとするか。・・・早くこの傘を売りさばかないとね・・。」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加