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苦笑いを浮かべると、宇佐木は首をふるふると横に振って「強引じゃない!」と言った。また面倒くさくなって「あー、うんそうだな」と棒読みで言うと、不審そうな目で宇佐木が熊谷を見た。でもすぐにまぁいっかとなって前を見る。
「だから私、かぐや姫って日本人だと思うの。月のお姫様って言われたし、月からの使者に連れていかれちゃったけど、絶対に日本人だよ。それに日本にある竹で生まれたんだから、もうそれで立派な日本人」
「あー、うんそうだね。うん、そうだと思う」
「ちょっと、棒読み止めてくれない? 悲しくなる」
いや、だってどうでもいいから。なんてこと言えず、熊谷は「悪い」と謝ると、スマホをポケットにしまった。腕時計を見ると、そろそろ10分休みも終わり、三時限目になるところだ。そろそろ予鈴も鳴る。
「熊谷君は、かぐや姫が日本人じゃないって思ってるんでしょ?」
「うん」
「はっきり言うね」
「だってかぐや姫自体が月の都のもので、この国のものじゃないって言っちゃってるし」
「でも日本の竹から生まれたよ? ノーって言えない典型的な日本人だよ? 着物着てるよ?」
「じゃあどうして日本のものなら、月の都から迎えが来るんだよ」
「そりゃ……ハーフだから?」
宇佐木は困ったように首を傾げると、熊谷は上を見ながら考える。
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