熊谷君と宇佐木さん

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「月の都と日本の? 大体、これが発表されたのが平安。当時はまだ混血っていうのがレアだったんだ。ハーフの可能性はかなり低いと俺は思う」 「よく知ってるね、さすが学年一位」 「順位関係なく、古文で習っただろ……。ていうか、これは俺の意見なだけで、本当かどうかは分からないから信じるなよ」  また呆れたように溜息を吐くと、宇佐木がけたけた笑った。頭良さそうに見えて、本当は根っからの。この前のテストも相当順位がヤバかったのか、顔が青白くなっていた。 「かぐや姫は月の都のもの。日本人じゃないと俺は思う。強いて言うなら宇宙人だ」 「思いたくないけど、私の仮説より熊谷君の仮説の方がよっぽど完成度高い……」 「そりゃどうも」  熊谷は一息ついたところでまたスマホを取り出すと、パッとそれが小さな手に取られてしまった。 「ゲーム、禁止」 「は!?」  宇佐木は立ち上がると、時間を見てスタスタと非常階段を下りてしまった。熊谷はポカーンとして、宇佐木の後ろ姿を見る。 「時間ですよ、行きましょう」 「は? どこに」 「授業です、」  熊谷はしばらく沈黙して、それから辺りに自分以外に誰かいるのではないかと見渡す。けれどここは普段は使っちゃダメな場所だし、無論周りには熊谷以外誰もいない。 「行きましょう、お姫様」 「いや、姫じゃねぇしッ! どっちかと言ったら王子様だしッ!」
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