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「へー、熊谷君って王子様だと自分のこと思ってるんだ~」
「思ってねぇよッ! どっちかと言ったらって言っただろーがッ! ていうか、授業行かねぇしッ!」
熊谷は言葉の勢い余って立ち上がると、宇佐木が不満そうな顔をする。
「えー、連れてくって先生に言っちゃったよー。だから迎えに来たんだよ? しかもかぐや姫の話してわざわざお迎えの匂わせしてたんだからー。それに内申あげるって言われたら、そりゃやるよねっ」
「やるよねっ、じゃないわッ。考えが汚いッ!」
「汚くないよー。高校生は成績と内申のことしか頭に無いよ? 学校推薦枠を狙ってる人なら特に。ほら、お迎えに上がりましたよ王子様」
「王子様とかやめろッ!」
「だって熊谷君が自分で言ったんじゃん」
「違う! 言ったんじゃなくて言わされたんだッ!」
熊谷は溜息を吐くと、宇佐木がひらひらとスマホを見せた。これから新たなゲームをやろうとしていたのに、寸での所で奪われてしまった熊谷のスマホ。命に等しいくらいのゲームのセーブデータが入っているスマホ。
「スマホも授業に来てくれたら返すよ。もし来なかったら……」
宇佐木はすっと横にスマホを突き出すと、危なっかしい手でスマホを持ち直した。下にはまだ階段が続いているため、高さがある。宇佐木が何を言おうとしているのか、その行動で大体分かった。
「落とすよっ」
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